こんにちは!
名稲建設株式会社です。
このコラムでは住宅ローン金利の変動金利・固定金利の金利の決まり方と、2022年12月に日銀が行った金融緩和政策の修正による影響について解説いたします。
マイホームを購入する際に決めなければいけないのが住宅ローン金利の種類です。
住宅ローン金利には変動金利と固定金利があり、それぞれ全く異なる理由によって金利が決まります。また、2022年12月に日銀が金融緩和政策を修正した影響で金利に変化が生じています。住宅ローン金利にも影響のある内容ですので、ぜひご覧になってください。
変動金利と固定金利の違い
まずは変動金利と固定金利(期間選択型・全期間)の違いについて解説いたします。
変動金利:
返済途中でも、国の金融政策などによって適用される金利が変動するタイプ。
一般的な金融機関では金利の見直しは半年に1度で、元利均等返済の場合、金利の見直しがあっても5年間は契約者の毎月の返済額は変わりません。適用金利上昇により6年目にその時点の金利により毎月の返済額が見直される際、元の返済額の1.25倍を超えない範囲で返済額が修正されます。金融機関によって異なるルールを設けている場合もありますので確認してみてください。
固定金利期間選択型:
借入から一定の期間は借入金利を固定し、期間が終わったのち金利のタイプ(固定金利もしくは変動金利)を選択できるタイプ。
全期間固定金利型:
借入から完済まで借入金利を固定するタイプ。
変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきか?
住宅購入を前に多くの人が直面するテーマですが、実際のローン利用者はどちらを選んでいるのでしょうか。
住宅金融支援機構が行っている「民間住宅ローン利用者の実態調査(2022年4月調査)」によると、変動金利を選んだ人は全体の73.9%。対して、全期間固定金利型は8.9%、残りの17.3%が固定金利期間選択型となっています。
住宅ローン金利の決まり方
ここでは住宅ローン金利の決まり方を解説いたします。
住宅ローン金利の変動金利・固定金利期間選択型・全期間固定金利型はそれぞれ異なる要因によって変動します。金利の決まり方を理解することで自分に合った住宅ローンを組みやすくなりますので、ぜひご覧ください。
【変動金利】
変動金利は短期プライムレートと連動して決まります。短期プレイムレートとは、銀行が最優良企業(業績が良く信頼性の高い企業)に融資する際の最優遇貸出金利のうち、1年未満の短期融資の金利です。短期プレイムレート自体は企業に適用される金利ですが、この短期プレイムレートに連動して住宅ローンの変動金利も変動します。この短期プライムレートは、金融機関同士がおカネを貸し借りする時の「市中金利(無担保コールレート翌日物)」に連動し、この市中金利をコントロールしているのが日本銀行の「政策金利」なのです。
景気の安定を至上命題とする日銀、景気が良くなれば日銀は「政策金利」を上げるように動き、景気が悪くなれば下げようとします。つまり、住宅ローンの変動金利は、「景気の良し悪しの実態」に影響されます。
【固定金利期間選択型】
固定金利期間選択型は円金利スワップレートと連動して決まります。金利スワップとは、異なる種類の金利に借り換えることです。最も一般的なのは変動金利と固定金利の交換で、日本円の取引の場合は特に円金利スワップといいます。変動金利から固定金利に借り換える際の金利の交換率が円金利スワップレートです。重要なのは、円金利スワップレートは金融機関や投資家の金利予想によって決まる、ということです。
実際に景気などが変化していなくても、金融機関や投資家の予想が上昇傾向であれば円金利スワップレートは上がり、固定金利期間選択型も上がります。国内の経済の実態で判断する日銀の金融政策に比べ、予想の方が早く展開してくため、変動金利に比べて固定金利期間選択型の方が変動するのが早いのがポイントです。
【全期間固定金利型】
全期間固定金利型は長期金利の代表である新発10年物国債の利回りと連動して決まります。新発10年物国債とは、最新の10年物国債です。国債は市場で取引されるものなので、国債の利回りは投資家の予想の影響を受けます。したがって、全期間固定金利型は、固定金利期間選択型と同様に景気の変化の兆候に敏感に反応し、変動するのが早いのがポイントです。円金利スワップレートは長期金利の影響を受けるので、全期間固定金利型が上昇するときは固定金利期間選択型も上昇することが多いです。
期間選択型・全期間とも、固定金利は変動金利よりも変動が早いのが重要なポイント。固定金利は予想(期待)で決まり、変動金利は実態で決まる傾向にあります。変動金利で住宅ローンを組んでいる場合に、「変動金利が上昇しそうだから固定金利に変えよう」と思ったときには、固定金利は既に上昇していることが多いので、注意が必要です。
2022年12月の日銀の金融緩和政策の修正
日銀は2022年12月の金融政策決定会合で金融政策を修正しました。最大の変更点は長期金利の変動幅の上限を引き上げるという内容です。
ここでは2022年12月の金融政策の修正について詳しく解説いたします。
【2022年12月の日銀の金融緩和政策の修正の内容】
日銀は物価上昇率2%の安定的な実現を目標とし、市中に多くの資金を供給する金融緩和政策を採っています。短期金利に対する代表的な政策がマイナス金利政策で、金融機関が日銀にお金を預ける当座預金の一部について-0.1%の金利を設定していました。また、代表的な長期金利の指標である10年物国債利回りを0%程度に誘導し、許容する利回りを±0.25%程度としていました。
今回の修正の最大の変更点は、長期金利の利回りの許容値を±0.25%程度から±0.5%程度に変更したことです。利回りの上限が0.25%では債券市場において10年物国債の取引が成立しない日が増えており、「市場機能が大きく損なわれる状況が出てきた」(黒田総裁)と日銀が判断した格好です。10年物国債の取引が成立しないと長期金利のデータがなくなり、「企業の社債発行など金融環境に悪影響を及ぼす恐れがある」(黒田総裁)ことになります。これまでの金融政策を継続すると市場への弊害が大きいと日銀が判断したということです。
【住宅ローン金利への影響】
日銀の金融緩和政策の修正により一般家庭が最も影響を受けるのが住宅ローン金利です。前述したとおり、変動金利は「短期プライムレート」(短期金利)、固定金利期間選択型は「円金利スワップレート」(長期金利)、全期間固定金利型は「新発10年物国債利回り」(長期金利)と連動します。2022年12月の日銀の金融緩和政策の修正は長期金利の変更のみなので、影響を受けやすいのは固定金利期間選択型及び全期間固定金利型です。固定金利期間選択型及び全期間固定金利型が連動する長期金利は日銀の修正発表を受けて2日間で0.48%まで上昇し、上昇幅は0.23%に達しています。
2023年1月時点の住宅ローン金利については後述しますのでそちらをご覧ください。
一方、短期金利に関する政策に対してのテコ入れは行われないため、変動金利には直接の影響はありません。また、ネット銀行の参入により金融機関の金利競争が激化している現状において、変動金利がすぐに上昇する可能性は低いと考えられています。ただし、市場への悪影響の懸念が続き、日銀の金融緩和政策の修正の影響が短期金利にまで及ぶと変動金利も上昇します。変動金利で借り入れしているご家庭にも遅れて負担がのしかかることとなり、そのときには固定金利は大きく上昇している可能性が高いことには注意が必要です。
12.24日経新聞記事マネーのまなび日銀、金融緩和政策を修正: 日本経済新聞 (nikkei.com)
【2023年1月の住宅ローン金利】
日銀の長期金利の修正発表を受け、2023年1月時点で各行の住宅ローン金利がどのように変化したかをご紹介いたします。
『変動金利』
ダイヤモンド不動産研究所の調査によると、主要14行のうち、2023年1月の住宅ローンの変動金利を引き上げた銀行はなし、引き下げた銀行が2行です。
◇auじぶん銀行 0.289%(前月比±0.000%)全期間引下げプラン、au金利優遇割
◇SBI新生銀行 0.320%(前月比▲0.030%)変動フォーカス、キャンペーン
◇PayPay銀行 0.349%(前月比±0.000%)全期間引き下げ
◇SBIマネープラザ 0.375%(前月比▲0.015%)通期引き下げプラン
◇みずほ銀行 0.375%(前月比±0.000%)全期間重視プラン
『10年固定金利』
ダイヤモンド不動産研究所の調査によると、主要13行のうち、2023年1月の住宅ローンの10年固定金利を引き上げた銀行が11行、引き下げた銀行はありません。
◇SBI新生銀行 1.050%(前月比±0.000%)当初固定金利タイプ、頭金10%以上、割引プログラム
◇ソニー銀行 1.245%(前月比+0.045%)住宅ローン、頭金10%以上
◇イオン銀行 0.990%(前月比±0.000%)当初固定金利プラン
◇みずほ銀行 1.400%(前月比+0.300%)全期間重視プラン
◇楽天銀行 1.442%(前月比+0.044%)金利選択型
『全期間固定金利』
ダイヤモンド不動産研究所の調査によると、主要8行のうち、2023年1月の住宅ローンの全期間固定・35年固定金利を引き上げた銀行が6行、引き下げた銀行が1行です。
◇りそな銀行 1.395%(前月比+0.100%)住宅ローン超長期
◇SBI新生銀行 1.700%(前月比±0.000%)ステップダウン金利タイプ
◇アルヒ 1.300%(前月比+0.110%)スーパーフラット35S・Aプラン
◇優良住宅ローン 1.430%(前月比+0.030%)フラット35S・Aプラン
◇三井住友信託銀行 1.430%(前月比+0.030%)フラット35S・Aプラン
◇みずほ銀行 1.430%(前月比+0.030%)フラット35S・Aプラン
まとめ
住宅ローン金利の種類は住宅ローンを組む際の重要な選択です。
ご家庭の経済状況に応じて適切に選択することで、無理のない計画的な返済ができます。
日銀の金融緩和政策により低金利が続いていましたが、2022年12月の金融緩和政策の修正により状況が変化しています。
これからマイホームのご購入を検討している方、既にマイホームを購入していて住宅ローンを利用している方はしっかりと情報を収集して無理のない返済計画を立ててみてください。